「退職代行」がXのトレンドワードに

「退職代行」とは、「退職したい社員に代わって退職の手続きを進めてくれる業者」を指し、ニーズが高まり、業者の数は増えているという。

厚生労働省の調査によれば、2020年3月に卒業して就職した新入社員のうち、高卒では37.0%が、大卒では32.3%が、3年以内に離職している。なるほど低いとは言えない水準と言えよう。大卒者の3割が3年以内に辞める傾向は、2010年から続いている

人手不足のなかで、次を見つけやすいから退職のハードルが低くなっているのであろう。面倒な退職手続きは、代行会社に任せてしまえばよい、そんな感覚が、コスパ・タイパを重視する最近の気質に合っているのだろう。

実際、就職活動も、できるだけ早く決めたい、そんな思いが強まっているように見える。インターンの早期化とは、つまりは、青田買いの横行であり、採用する企業も、される学生も、どちらもともに、最小限の労力で、大きなリターンを狙おうとしている。

「大卒の30%が3年で辞める」傾向は30年前から

企業も学生も早合点するのだから、ミスマッチが横行し、早期退職者が増える。そう解釈すれば、昨今の「退職代行」の流行は、ごく自然に見える。

しかし、図表1を見ればわかるように、大卒者の3割が3年で辞める傾向が始まったのは1995年であり、30年近い。就職氷河期であろうとなかろうと、あるいは、景気が良かろうと悪かろうと、今の50代前半から下の世代に共通している。入社から間もない離職は、決して最近のトレンドではない。

【図表】大卒の就職後3年以内離職率の推移
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」を基にプレジデントオンライン編集部作成

人手不足ではなかった時代から始まっているどころか、新卒者の就職が厳しかったころにも同じだった。より良い労働条件を求める、それは、どんな時代の、誰にでも切実な望みだからである。ブラックだのホワイトだのという言葉がなかった頃から、いつも人々は、少しでも恵まれた環境を目指してきた。アルバイトであれ、正規雇用であれ、変わらない。

なぜ今、「退職代行」がトレンドになり、それが、いなば食品をめぐる炎上につながるのだろうか。ここにこそ、昨今の労働をめぐる価値観が現れている。